お客様に対応するとき、間違ったことばを使っていないかな?
この言葉は、なんて言い換えればいいのか分からないよ…
今回はそんな疑問に答えていきます!
会話形式で進めていくのでどんどん読み進めるのではなく、会話のところでいったん、「どこが間違っているんだろう?」と考えてから先に進むことをお勧めします。
~になります
『失礼致します。こちら、次のお料理になります』
よく飲食店に行くと耳にする、この『なります』。
実は、間違って使っていることに気づいていない人がほとんどです。
あなたは、気付けましたか?
ブライダル風の例を挙げると、『こちら、ご注文いただいたお料理になります』やブライダルでいうと『本日の乾杯酒はスパークリングワインになります』ですね。
耳にし過ぎて、あまり違和感を感じない人の方が多いのではないでしょうか。
一度、指摘されて直した人にとっては違和感ありありの言葉だと思います。
もともと『~になります』には、「変化して別の事物に至る。または、時間が経過して、ある時期時刻天気などに移る」といった意味があります。
つまり、『こちら、次のお料理になります』は、料理自体が何か別のものへと変化しているわけではないので間違っているというわけです。
ですので、料理を持っていく際には、『ご注文いただいたお料理をお持ちしました』と言って、お客様に提供しましょう。
お伺いいたします
『すみません。ちょっといいですか?』
『かしこまりました!只今お伺いいたします』
どうでしょうか。
個人的には、敬語の中で一番間違って使っている人が多いと思います。
『伺う』は、目上の人の様子をうかがいみるという意味から、その動作の相手を敬う謙譲語です。
そのため、伺うに『お』を付けると二重敬語になってしまい、間違いです。
しかし、あまりにも間違って使用している人が多いため、『お伺いします』でも話し言葉であれば問題ないとされる場合が多いです。
また、『いたします』についてですが、『いたします』は「する」の丁重語で相手に対する敬意を示すため、『いたします』単体で用いる分には問題ありませんが、すでに『伺う』が謙譲語としてある場合、二重敬語になってしまいます。一つの動詞に敬語は一つで十分です。
お客様に声をかけられた場合は、『ただいま伺います』と言って、対応しましょう。
どうかいたしましたか?
『(あっ…箸落としちゃった。どうしよう。新しい箸もらえないかな)』
『——お客様どうかいたしましたか』
これも一見、間違っていないように思えますが、間違いです。
『いたす』は自分から相手に向かう動作や物事について、それが及ぶ人物(相手)を高めるという意味の謙譲語だからです。
つまり、相手の行いに敬意を表するときは、謙譲語ではなく尊敬語を用いなければなりません。
相手に尋ねる際は、『どうかなさいましたか』、もしくは『どうされましたか』と聞きましょう。
よろしかったでしょうか?
『すみません。日本酒の熱燗をお願いしてもいいですか』
『日本酒の熱燗でよろしかったでしょうか』
『はい』
『かしこまりました。少々お待ちくださいませ』
のように、お客様から注文を受けたときは、聞き間違えがないようにオウム方式で聞き返さなければなりません。
その際に、ついついしてしまうのが『よろしかったでしょうか』という言葉を使ってしまうことです。
この言葉のどこが間違っているのかというと、現在お客様から聞いていることに対して、過去形で聞き返してしまっているところが間違いです。
ただし、「過去に一度聞いた約束や情報が間違っていないかどうかを確認する」という点においては間違いになりません。
あってはなりませんが、しばらく経ってから前に聞いた注文を忘れていることに気づき、お客様に再度注文を聞きに行くといった場合は『よろしかったでしょうか』を使えるということですね。
お客様から受けた注文をその場で聞き返す場合は、『よろしいでしょうか』を使いましょう。
大丈夫です
『すみません。この料理ってもう食べても大丈夫ですか?』
『はい、食べていただいて大丈夫です』
『大丈夫ですか』と聞かれたら、『大丈夫です』と条件反射で返したくなるのが人間です。
しかし、この「大丈夫」は自分と同等、またはそれ以下の地位の相手に対して使う言葉なので敬語として使うのは間違っています。
ですが、あまりにも間違って使っている人が多いため、敬語ではないことに気付かない人がほとんどだと思います。
そのため、お客様に『大丈夫です』という言葉を使ってしまっても特に気にすることなくスルーされることが多いと思いますが、『食べていただいて大丈夫です』と伝えたい場合は、『大丈夫です』ではなく、『結構です』と正しい敬語を使って接客しましょう。
もしくは、『構いません』という言葉を使えるとベストですね。
~様でございますか
『ご歓談中、失礼致します。aitoki様でございますか』
『はい、そうです』
相手の氏名を確認するときですが、上の制服を着た青年のように『——様でございますか』と言わないように注意しましょう。
補助動詞「ある」を丁重かつ丁寧にいう語が「ございます」に当たります。
そのため、物などがあるという意味では使えますが、人に対しては使えません。
人がある、なんて言いませんよね?
人に対して言う時は『——様でお間違えないでしょうか』または、『——様でいらっしゃいますか』と言えるようにしましょう。
ご覧になられる
『こちらをご覧になられて、お待ちくださいませ』
この言葉をブライダルで使うことは少ないですが、意外と間違えやすい言葉なので取り上げてみました。
どこが間違っているのか。
古典を学習していた人なら、もうお分かりですね。
『なられる』の部分が間違っています。
『なられる』はラ行五段活用動詞「なる」の未然形である「なら」に、尊敬の助動詞「れる」がついた形です。
つまり、「見る」の尊敬語である『ご覧になる』に、尊敬の助動詞がついた形の『なられる』を合わせた『ご覧になられる』は、二重敬語になっているので間違いです。
もし使う機会があれば、『ご覧になられる』ではなく、『ご覧になってお待ちくださいませ』と伝えましょう。
初めてバイトをする人へ
今回は、敬語の間違った使い方を例を用いて説明しました。
どうでしたか?
あなたはすべての間違いを正せたでしょうか?
この記事は新しくアルバイトを始める人に向けて書きましたが、意外とすでにアルバイトを始めている人でも分からなかったことが多かったのではないでしょうか。
私自身、調べて初めて分かったこともありましたし…(笑)
しかし、間違いをすべて知っているから大丈夫だというわけではありません。
話が少し矛盾してしまうようですが、大事なのは敬語を使い分けることです。
学生のうちに正しい敬語が身につけば、もちろん就職したあとのビジネスシーンにて、相手にいい印象を与えることができます。
ですが、学生の身分でガチガチの敬語を使ってばかりいると『言わされている感』が全面に出てしまいます。
特に、居酒屋やブライダルアルバイトはお客様と会話する場面が多々あるので、堅苦しい敬語ばかり使ってしまうとお客様も話し辛くなってしまいます。
お客様と気まずい雰囲気の中で、何分間か話をし続けるのは嫌ですよね?
どうせ会話するなら、旧知の友のように明るく楽しい会話がしたいものです。
このことから、敬語を使い分けることの重要性が分かるのではないでしょうか。
それでも中には、『自分に、敬語を使い分けるなんて器用なことできるわけない…』と落ち込んでしまう人もいるかもしれません。
そんな人には、最初の足がかかりとして他にどのような敬語があるのかを調べてみることをおすすめします。
ネットで調べてもまだまだ知らない敬語は出てくると思いますが、本などの参考書をもとに勉強したい方がいれば、「失礼な敬語」という本がおすすめです。
分かりやすい具体例を用いて、接客でよく使われるマニュアル敬語を中心に扱っていたので、とても分かりやすかったです。
機会があれば、一読してみてください。
それはさておき、自分で調べ何度か日常生活の中で、使っていくうちに気が付けば自然な敬語を使い分けることができるようになっていると思います。
実践するのは、全てを知った後からでも十分間に合いますよ。
スポーツと同じで、何回も繰り返し練習することが敬語を上手に使い分ける近道です。
私もまだまだ完璧には程遠いので、一緒に試行錯誤しながら成長していきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。